医者
夫婦のどちらかが医師であったり、夫婦の両方が医師である場合の離婚は、紛争が複雑化、長期化する傾向にあります。
これは以下のとおり、財産分与の対象となる財産が多岐にわたっていたり、開業している場合は医療法人の出資持分が争点となることが原因となっています。
まず、財産分与では、対象となる夫婦の財産について評価額を決める必要があります。
しかしながら、関係が悪化した夫婦間では、この評価額がなかなか決まらないものです。
例えば、自宅を取得したい当事者は、自宅の価値が低い方が有利になりますし、反対に自宅を取得しない当事者は、他の財産(通常は預貯金)を多く取得するために、自宅の評価については高い方が有利となります。
自宅ひとつの不動産でもなかなか容易には合意に至らないのですが、当事者に医師がいる場合、自宅の不動産に加えて、病院、診療所に利用されている事業用の不動産を所有していたり、または資産運用を目的とした不動産を所有していることも多く見受けられます。
不動産以外にも高級車や貴金属、高級腕時計なども財産分与の対象になります。
このように、評価額を決めなければならない対象が多くなると、どうしても離婚協議に時間がかかってしまうのです。
そして、特に問題となるのが医療法人の出資持分です。
平成19年に医療法が改正される前に設立された医療法人には出資持分があり、この出資持分も財産分与の対象となります。
医師のみが出資持分を持っている場合もあれば、夫婦で持っている場合もあります。
夫婦それぞれ出資持分を持っている場合、医師ではない当事者は離婚と同時に医療法人とのかかわりも解消したいと考えますので、自身の持分について名義の変更を求めることになります。
しかし、この出資持分が夫婦の財産の中で大きい割合を占めていることも多いため、出資持分が原因で、具体的にどのように財産を分けるかという協議が難航してしまうのです。
他にも、養育費や婚姻費用は、一般的には算定表という最高裁が示した基準を参考にしながら、夫婦の収入に応じて決められることが多いのですが、当事者に医師がいる場合は、年収が算定表に記載された上限(2000万円)を超えていることもあり、当事者同士では適切な金額を決めることが困難という問題があります。
収入が算定表の上限を上回っている場合は、算定表の根拠となっている計算式に遡って計算する必要があります。
以上のとおり、医師が当事者の離婚は、複雑化、長期化する傾向にありますので、お早めに弁護士にご相談ください。